*日本人の泣寝入癖

日本人ほど泣き寝入りをする国民は、他の文化国に類を見ないそうである。しかしこれは無理もない。昔から "啼く子と地頭には勝たれない" と言われる通り、今もその封建的遺産が残っているためである。
一例を挙げれば、新聞雑誌の中傷的記事で迷惑をしても、新聞屋に睨まれるとまたどんな記事を書かれるかもしれない、といって泣き寝入りする。官憲の処置が納得がゆかない場合でも、それに不服をいうと後の祟りが恐ろしいといって泣き寝入りする。 税務署の課税が不当だと思っても、感情を害ね睨まれでもすると大変だからといって泣き寝入りする。押し借り、ユスリなどを断ったり訴えたりすると、後のシッペイ返しが怖いといって泣き寝入りする。いまだに絶えない各地のボスなども、泣き寝入りをいい事にして大いに跋扈し、良民を苦しめる事は誰でも知っているところである。
彼の米国などの話を聞くと、人権を無視したり不合理な扱いを受けたりすると、断乎として抗議をし、正理が貫徹するまでは決して後へ引かないそうである。人民にこの意気あってこそ社会の不正は防遏され、正義は守られるので、真の民主主義社会が実現するのである。故に日本が民主的明朗なる社会を作らんとすれば、正義の蹂躙に対し断乎として屈せざる事で、即ち善が悪に勝たなければならないことである。この風潮が社会に瀰漫するにおいて、初めて民主日本となるのである。

【昭和24年(1949)御発表】

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