*恐怖を除く

我々の目標とするところは、常に言うごとく人類救済にあるのである。としたら、人類救済という事は一言にして言えば、人類社会から一切の恐怖を除く事である。勿 論その最大なる恐怖としては、病気であり、貧困であり、闘争である。
右の三大恐怖のうち、その主座を占めているものは何といっても病気である。病気の恐怖ほど常に人間を脅かすものはない。何人といえども、一生を通じてこの不安から全く免れるものは、一人もないといってもよかろう。次に第二の恐怖としては貧乏であるが、その原因の大方は病気からであるのは勿論で、この病気の恐怖こそはいかに文化が進歩しても減らないのみか、むしろ増しつつあるとさえみらるる事実である。ところで、今日病の原因はほとんど黴菌としているから、黴菌の恐怖に至っては昔人にはみられないほどである。それがため健康診断、各種の予防注射、レントゲン写真等あらゆる手段を講じつつあり、それがため保健所や療養所、官私の病院や国立療養所、町医等々病患を防止するためのあらゆる施設は至れり尽くせりといってもいい程で、これらに要する莫大な費用と労力は計算の出来ない程で、民衆の負担 も蓋し容易ならぬものがあろう。
次に貧困の恐怖であるが、この原因の最大なものは前述のごとく病気であろう。これがため、個人としての療病費の多額や、罹病中の職業の放擲等による損害はもとより、特に患者が主人である場合、不幸の結果は遺族の生活難は免れ得ないところである。終戦後犯罪激増の大半は、これらの原因も大いにあろう。勿論そもそもの原因が戦争のためもあるが、戦争の被害は一時的で、病気のほうは永久的であるにみて最も深刻性がある。
次に戦争の恐怖も如何に大きな悩みであるかは、今現に世界人類がなめつつある事実によっても明らかである。というのは米ソ間の深刻な摩擦で、戦争が何時勃発するか分からない状勢にまで切迫している事である。しかも原子爆弾という空前な恐るべき武器が現れた今日としては、もし第三次戦争が始まったとしたら、人類の破滅は必至であるとさえ言う学者があるくらいだから想像に難からずで、今日人類にとってこれ程の恐怖はあるまい。
以上の三大恐怖の解決こそ、人類に与えられたる一大課題である。実に今日までの人類はあまりにも苦悩の絶え間ない世界であった。この世に確かに神がありとしたら、神の大愛はこのような世界をそう長く許容し給うはずはない。必ずやこのような苦悩の時代は打ち切りとなって、善美なる地上天国が生まれなければならないはずである。何よりもこのことを絶対確信している我等は、不動の信念をもって邁進しつつあるのである。キリストの、天国は近づけりと予言された意味も、この事でなくて何であろう。
以上の意味によって、右の三大恐怖の解決こそ、宗教の真の使命である事を痛感するのである。

【昭和25年(1950)御発表】

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